tk's diary

2回の眼科手術を終え退院しました

tkです。2月も終わり3月になりました。いくらか春めいてきましたね。

2月は長かったような気もしますし、あっというまだったような気もします。2023年1月22日に書いた前回の記事の通り、私は2月には眼の手術を行っていたのです。

上旬に左眼の手術を行うことは事前に分かっていましたが、急遽右眼の方も手術することになりました。2月上旬に左眼の眼内レンズ摘出・多焦点眼内レンズ・網膜硝子体手術を行い、2月下旬に右眼の眼内レンズ摘出・単焦点眼内レンズ・網膜硝子体手術を行う、といったような具合ですね。2回も手術を行うとなるとかなり慌ただしかった……!

手術は2回とも同じようなもので、違いとしては眼内レンズの種類が多焦点か単焦点かくらいしかありません(まあ、手術費用にはかなりの差が出るのですが……)。

 

手術内容

手術内容については前回の記事で書いた通りです。ごく簡単に言うと5歳の時に行った白内障手術のやり直しになります。

白内障手術というと、今や日帰りで行っているところもあるくらいの簡単な手術と思われる方もいると思いますが、そんなことはありません。眼に切開を入れる外科手術であることには変わりありませんし、手術者の腕によって術後の視え方にかなり差が出るとのことです。特に、多焦点眼内レンズを用いる場合は、単焦点眼内レンズを用いる場合よりも手術の難易度が格段に高く、下手な眼科医で手術をすると10割負担の高い手術代を払ったにも関わらずよく視えない、などという悲劇も起こるようです。

特に、私の場合は単なる白内障手術ではなく、白内障手術のやり直しになります。通常、白内障手術は眼の水晶体の嚢の中に眼内レンズを入れます。しかし、一回白内障手術を行っていたり、何らかの事情で水晶体嚢が使えない人は、眼の強膜(白目の部分)に眼内レンズを直接縫い付ける方法を取ります(これを強膜固定といいます)。

眼の構造について。強膜は白目部分を、(下の方で述べる)瞳孔は眼の中心部を指します。

強膜固定についてはここ十年くらいの間に出てきた新しい手術法であり、素人向けの解説もあまりないので、私も十分理解しているとは言えないのですが、強膜固定は通常の白内障手術より難易度が高く(出来る眼科医が少ない)、患者の身体への負担も大きいようです。

また、一回入れた眼内レンズを摘出するということも難しい手術で、患者の身体への負担が大きくなります。私の場合、20年以上前の手術で入れた古い眼内レンズで、手術の際に眼に入れる切開を少し大きくしないと取り出せないとのことでした。

というわけで、私の手術はかなり重いものでした。2月上旬の手術の際、同じ日に私含め6人の患者が手術を受けましたが、この患者の中で最も重い手術だったそうです。

なお、余談ですが、2月下旬の手術の時は同じ日に私含め8人の患者が手術を受けました。この8人の患者の手術を、当日の診察が終わった17時くらいから1人の眼科外科医が行うのです。スーパードクターって凄い。手術室が2部屋設けられており、1部屋で手術、もう1部屋ではすぐに手術ができるように看護師が準備を進める、といった具合で非常に効率的に進めているようでした。

 

手術当日

手術当日は色々と大変でした。まず、待ち時間が異常に長いです。朝集合して手術が終わったのは夜です。これは、手術に向けて様々な準備が必要だったり、私の手術を行った眼科外科医の診察が終わるのに夕方くらいまでかかるからです。仕方ありません。

手術の準備として、瞳孔を開く点眼薬をこれでもかというほど点眼します。

瞳孔は眼の中に取り入れる光の量を調節しており、暗いところだと開き、明るいところだと閉じます。暗いところから急に明るいところに出ると眩しいと感じますが、それは瞳孔が開いている為に眼の中に入る光量が多いからです。逆もまた然りで、暗いところで次第に眼が慣れてくるのは、瞳孔が徐々に開いて眼の中に入る光量が増えていくからですね。

眼科の診察では眼の中を診るために瞳孔を開く点眼薬を点眼することがあり(これを散瞳といいます)、私は慣れたものですが、手術を行う際はこの瞳孔の開かれ具合(?)が尋常ではありません。瞳孔がガバガバになります。眩しすぎてまともに何かを視ることが難しいほどです。

手術直前になると点滴の注射も打ちます。手術中に点滴から鎮静剤を落とすことが目的です。点滴を打ったことがある人なら分かると思うんですけど、針が太いんですよね。採血の注射の針なんかより全然太いです。私は子供の時から何度も何度も点滴を打った経験があるのですが、それでもやはり痛いものは痛かったです(子供)。

また、眼球が動かないようにする為に眼の下瞼のところに眼球注射を打ちます。眼球に注射されるのは始めての経験でした。思ったよりは痛くありませんでしたが、注射中の異物感が強烈でした。注射をした瞬間から眼球が自分の意思で動かせなくなり、麻酔って凄いなと思いました(小並感)。

手術自体は鎮静剤と麻酔のおかげで辛くありませんでした。いくら眼を弄られようと感覚がありませんし、鎮静剤で意識が朦朧としていたので記憶が大分朧気です。気が付いたら手術が終わっていた、というような感じでした。

 

手術を終えて

手術が終わった直後数日間は毎日検査・診察があり、当然療養も必要なので、病院近くのホテルに(全国旅行支援を使って)宿泊したり、病院に入院したりしました。

手術後暫くは眼の違和感が大きく、ものを視ようとしてもよく視えません。当たり前ですが外出も禁じられています。病院に入院していた時を除き、食事の用意を中心として様々なことで妻の介助を必要としました。妻には本当に感謝しています。

地味にキツかったのは手術後1週間は洗顔・洗髪が駄目で、シャワーも浴びることができないことです。人間誰しもそうだと思いますが、1週間も身体を洗わないと身体中が脂や垢に塗れて周囲には腐臭が漂います。こうなると、人間としての尊厳を踏み躙られたような気さえしてきます。毎日シャワーを浴びて風呂に入ることができる文明人としての生活が、とてもありがたいものに思えてきます。

眼を使えない為、主な娯楽は Amazon の Audible でした。良い機会なので、紙媒体で既に読了済みであるアガサ・クリスティの『スタイルズ荘の怪事件』『アクロイド殺し』『オリエント急行の殺人』『ABC殺人事件』を読み直し(聴き直し?)ました。一人の朗読者が男性の台詞も女性の台詞も朗読するのは最初違和感があったのですがすぐに慣れました。後は実用書やライトノベルなどを色々聴きかじりました。ライトノベルは男性朗読者と女性朗読者が別で、キャラクター毎に非常に巧みな演じ分けがなされていたところが良かったです。

 

そして現在

実はこの記事は裸眼で書いてます。

左眼について、手術前は裸眼視力が0.02程度だったのですが、手術後は0.6程度に改善しました。私は眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が正常な眼よりとても長い為に弱い近視は残ってしまいました(これは手術前から分かっていた)が、かなりの改善ですね。日常生活くらいなら裸眼で送れそうです。眼鏡をかけるにしても、今までのような非常に強い度の眼鏡は必要なく、ちょっと度が入った眼鏡さえかければ1.2程度の矯正視力を得ることができます。

また、多焦点眼内レンズの強みで、遠くだけでなく近くもしっかりとピントが合って視えます。多くの人が勘違いしているのですが、一般に視力と呼ばれるものは5mの距離で測ったものである為、視力が良かったとしても近くの視え方も良いとは限りません。遠視の人や老眼が進んだ高齢者だと視力が良くても近くが良く視えないということが起こり得ます。これと同じで、遠くに焦点がある単焦点眼内レンズを入れると視力としては良くても近くが視えにくくなり、老眼鏡が必要になります。しかし、私は多焦点眼内レンズを入れたおかげで遠くにも近くにも焦点がありますから、近くもピンとが合って視えるのです。

今回の手術を終えても、私が緑内障で失った視神経が生き返ったわけではありませんから、やはり健常者のように視えるわけではありません。相変わらず視野(一度に視える視界の範囲)は健常者のそれより狭いですし、右眼(既に中心視野を失った眼)は手術したとはいってもやはり文字を読むなどのことはできません。

しかし、この手術による改善が大きな改善であることには間違いありません。小さい時から眼鏡をかけて生活するのが当たり前だった私にとって、裸眼で生活できるというのは新しい自分に生まれ変わったような気さえしてきます。色々としんどいことも多かったですが、手術をして本当に良かったです。

手術後1ヶ月程度は生活に制限があり、まだ完全に終わったわけではありませんが、大分落ち着き、こうしてブログも書くことができています。ちゃんと自宅で療養し、病気休暇を取っている仕事に復帰し、友人たちと顔を突き合わせて会えるようになれたらな、と思います。