tk's diary

2023年2月 眼内レンズ摘出、多焦点眼内レンズ、網膜硝子体手術

tkです。2023年2月上旬に眼の手術を行うことになりました。2022年年末の記事に書いたやつですね。

では、どのような手術を行うのか? 私は1回の手術で以下3つの手術を行うことになっています(手術という言葉が多すぎてゲシュタルト崩壊してきますね)。

・眼内レンズ摘出

・多焦点眼内レンズ手術

・網膜硝子体手術

ただ、この3つの言葉を聞いても、このブログを読んでいただいているほとんどの方は意味がよく分からないと思いますし、皆様にも無関係な話では決してないと思いますので、ブログとして書いておこうと思います。

 

モノが見える仕組み

根本的な話ですが、そもそも私たちの眼はどのようにしてモノを見ているのでしょうか。

眼の構造(フリー素材)。角膜と毛様体筋の位置を加筆しました。

眼にやってくる光は、眼の入口である角膜で少しだけ内側に屈折し、水晶体で屈折し、硝子体の中を通って網膜に像を結びます。網膜で得た情報が視神経を通って脳に送られることで「見えている」わけです。

水晶体は毛様体筋という筋肉の働きにより薄くなったり厚くなったりして屈折の度合いが調節されます。中学理科を覚えている方やカメラが趣味の方には、眼の水晶体は凸レンズで、薄くなったり厚くなったりの調節で焦点距離を変えている、といったら分かりやすいでしょうか。この調節のおかげで、近くのモノも遠くのモノも網膜に像を結び、ピントが合って見えます。

近くのモノを見過ぎると眼が疲れるとよく言われるのはこの調節の為です。近くを見る時は毛様体筋が緊張してレンズを厚くしているのですが、他の筋肉と同様に毛様体筋も使いすぎると疲れてしまうのですね。人間はずっと近くを見続けられるようにはデザインされていません(これは人間が進化してきた歴史から考えても当然ですよね)。

水晶体が硬くなったり毛様体筋が衰えたりすることで近くのモノが見辛くなるのが「老眼」です。老眼というと若者には無関係と思われがちですが(老眼という言葉が悪い)、老眼は20代で始まると言われているので、このブログを読んでいるほとんどの方には既に老眼が始まっています。決して無関係ではありません。

 

白内障という病気

水晶体のレンズが白く濁ることで起こるのが白内障です。原理的に、歳を取れば人間は必ず白内障になるようです。なんと80歳以上の100%が白内障という統計があります。これまでの人間の歴史では、多くの方が眼の寿命が来る前に亡くなっていました。それが逆転して、多くの方が生きている内に眼の寿命が来てしまうというわけですね。

白内障手術では、白く濁った水晶体のレンズの代わりに人工的な眼内レンズを入れます。一般的に多く用いられている眼内レンズが単焦点眼内レンズで、普通の凸レンズですから焦点が1つしかありません。焦点が1つしかないので、遠くに焦点があるレンズを入れると近くが見辛く、近くに焦点があるレンズを入れると遠くが見辛くなり、用途に応じて眼鏡が必要になります。水晶体のレンズのようにはいかないわけですね。

これに対して焦点が2つ以上ある眼内レンズが多焦点眼内レンズです。何故焦点が2つ以上あるかというと、レンズに同心円状のギザギザを付けることで光を回折させ、焦点を2つ以上作っているようです(最もポピュラーな回折型多焦点眼内レンズの場合)。その為、裸眼で近くも遠くも見ることができます。

これだけ聞くと何だか凄そうですが、多焦点眼内レンズも万能ではなく、単焦点眼内レンズに劣っている点がいくつかあり、光を回折で分けることによる光量の低下から起こるコントラスト感度の低下、夜間に光がにじんだりぎらついたりして見える現象(ハロー・グレア現象)が挙げられます。また、多くの場合は保険適用外になることもデメリットでしょう。

 

眼内レンズ摘出・多焦点眼内レンズ手術

ここまできてようやく私の手術の話に入れます。私は若年性の白内障で、なんと5歳(!)の時に両目とも白内障手術をしています。この時入れた眼内レンズは単焦点眼内レンズです。当時の日本にはそもそも多焦点眼内レンズなどありませんでした。

つまり、私の眼は物心付いた時から単焦点眼内レンズだったわけです。水晶体のレンズによって連続的に焦点が合って見える世界を生きたことがないんです。当然この時からずっと眼鏡をかけていました。私の人生は眼の苦難の連続といっても過言ではないでしょう……! この野郎醤油瓶…!

さて、5歳の時に入れたこの単焦点眼内レンズ、これでしばらくは良かったのですが、2022年12月下旬にこの眼内レンズが外れかかってきていることが発覚しました。眼内レンズが外れかかっていることで見え方の質の低下や眼内の炎症など良くないことが引き起こされますし、眼内レンズが外れて眼の内に落っこちてしまうと更に大変です。

私を診察した(スーパードクターとされる)眼科外科医曰く、「白内障手術の中でも子供の手術は難しいので超上級者の眼科医以外は手を出すべきではない。見たところ、素人レベルの手術が行われている。」とのことです。この野郎醤油瓶…!(天丼)

そこで、まずこの外れかかっている眼内レンズを摘出します。そして近くも遠くも見やすいように多焦点眼内レンズを入れる手術を行うことになりました。多焦点眼内レンズだと保険適用外で高いのでは? って声が聞こえてきそうですが、そもそも眼内レンズの摘出が保険適用外なので、単焦点眼内レンズを選択しても保険適用外になります。同じ保険適用外なら多焦点眼内レンズを、というわけですね。

 

近視と網膜剥離について

話を眼の一般論に戻します。今や現代人の多くが近視を抱えており、完全に裸眼で生活できる! って人の方が珍しいんじゃないでしょうか。このブログを読んでいる方のほとんどは眼鏡かコンタクトを使用していると思います。

近視の多くは、眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が長くなることにより起こります。

近視では眼が前後に膨らむように眼軸長が長くなっています。遠視はその逆。

眼軸長が長い為に眼に入ってきた光が網膜の手前で像を結んでしまい、遠くのモノにピントが合わないのです。眼軸長が長くなる原因には諸説あり、一説では子供の内に紫外線を十分に浴びないと長くなりやすいとされています。そして、一度長くなった眼軸長は短くなりません。一度伸びた人間の身長が縮むことはないようなものです。

この眼軸長が長いと嬉しくないことがいくつもあります。その内の1つが網膜が薄くなってしまうことです。風船をイメージしてもらえば分かりやすいですが、風船は膨らむと厚さが薄くなりますよね。それと同じことが眼にも起きます。

網膜が薄くなると、網膜に部分的に穴が開いて(網膜裂肛)、やがて剥がれます。これが網膜剥離です。剥がれてしまった網膜はもはや網膜としての役割を果たしませんから、その部分の視野が欠けます。モノを見る時に中心的な役割を果たす黄斑まで剥がれると視力が一気に下がり、失明に至ります。これが近視による網膜剥離で、老化によるもの(これは硝子体が関係する)と違って若い人でも発症します。

上で述べたように近視だとリスクが高まる眼疾患ですので、皆様にも無関係の病気とは言えません。また、困ったことに、近視によってリスクが高まる眼疾患は網膜剥離以外にもいっぱいあります。日本人の失明原因の第一位であり、私の生涯の宿敵ともいえる緑内障も、近視によってリスクの高まる眼疾患とされています(私と緑内障については2021年8月14日に書いた記事をご参照ください)。

 

網膜硝子体手術について

再び話を私の眼のことに戻しましょう。

私も例外なく近視であり、それも強度近視です。その為、眼科外科医曰く「かなり網膜がやせている」とのこと。網膜も部分的に剥離してしまっているようです。これを元に戻す(復位させる)のが網膜硝子体手術です。

また、私の場合は、白内障のせいで硝子体が濁る硝子体混濁を起こしています。眼でモノを見る原理からも分かる通り、硝子体が濁っていると眼内を通る光を邪魔してしまう為、見え方の質が悪くなりますし、眼内に異物があるということで炎症を起こします。これも当然良くないことですので、網膜硝子体手術で取り除きます。

 

手術後どうなるか

このような手術を行うわけで、手術の際は当然眼に穴を開けることになります(小さい穴ではありますが)。感染症の危険が伴う為、手術はクリーンルームで行われます。レベルの低い眼科だとクリーンルームではなく普通の部屋で行うというから驚きです。

当然、手術後しばらくは私生活に影響が出ます。まず、手術後は頻繁に検査・診察が求められるのは言うまでもありません。

手術後1週間程度は絶対安静。洗髪・洗顔すらしてはいけません。何と言っても眼に穴を開けているわけですから、水道水が眼に入ってはいけないわけです。所詮、水道水も異物ということですね。

また、手術後3週間程度も基本安静で過ごすことが求められます。眼を酷使することも駄目です。そうはいっても現代の生活を送ること自体が眼の酷使ですから、現代の生活は送れませんね。当然、お仕事もできません。職場には事情を話して、手術以降、2月いっぱいはお休みということになりました。

また、こんな状況で、私だけで日常生活を送ることは困難ですので、妻にも職場に事情を説明してもらい、2月中はテレワークしつつ看病してもらうことになっています。圧倒的感謝。

ということで長い長い冬休みになりますが、眼が使えないとなると……何をして過ごせばいいでしょうね。ベッドで横になって、なおかつ眼を使わない娯楽って Amazon audible くらいしか思いつきません。youtube とかだと再生時間が短いことが多いし、やはり視覚がないと微妙な気がします。何かアイデアがある方は是非教えてください。

 

というわけで手術頑張ります! この記事を読まれた方は是非応援してください(懇願)。

ちなみに、今回の手術は私の人生において5度目の手術になります(今まで、眼を3回、腰を1回手術しました)。多スギィ! 手術(を受ける患者として)のプロといっても差し支えありませんね。

ではでは今回の記事はここまで。見え方の質、あがってくれ~!